2022年GW中、初めて地上波で「映画おしりたんてい スフーレ島のひみつ」が放送されました。
何となく観ていたPERiPEN_ですが、これは怪盗Uから少女ルルへのグルーミングでは…?めちゃくちゃ分かりやすいから小学生向けの教材になるレベルでは…??と感銘を受けました。
作品の概要 ※ネタバレあり
まず、おしりたんていという作品は「おしりと屁をモチーフにした探偵」「💩の形のマスクをかぶった怪盗」「クソ寒いギャグ(古い)」「ジェンダーステレオタイプ」を含有している事実があるので、個人的に視聴をお勧めしたいわけではありません。
PERiPEN_と作品の出会いは1年くらい前でしょうか、土曜日に朝食を用意し、席についてテレビのリモコンをつけるとちょうど放送しているんですよね。昔から排泄物系の下ネタが本当に苦手で、💩の絵文字を使っているというだけでフォローできないフェミニストもいたくらいです(笑)怖いもの見たさで視聴しました。
…すると何だか良くわからないけど泣けてしまうんですよね…自分は涙もろいですがまさか”コレ”で泣くなんてちょっと衝撃でした。本記事で紹介する映画「スフーレ島のひみつ」も涙腺にきましたね…作品とはそんな距離感です。(どんな)
さて、映画はどんなストーリーかと言うと…
- 年中風が吹いているスフーレ島に、怪盗Uから「風のみちしるべをいただく」と予告状が届いたため、おしりたんてい一行が島にやって来る
- 風のみちしるべという宝は島の大灯台にある。この宝は天候に合わせて光り輝く色が変わり、遠くまで嵐などの情報を伝えている
- メインキャラの「ルル」という少女は天才肌で、自由に風にのって飛行する能力に長けている。しかし大灯台を守る一族であるため、将来はそれを継ぐと決められている
- ルルは一族のルールを押し付けてくる家族に嫌気がさし、いつか島の外に出てみたいと夢を見ている
- ある日ルルは、飛んでいたときに怪盗Uと出会う。擦りむいたひじに、怪盗Uが絆創膏を貼る。怪盗Uの「世界を自由に行き来して、ただ美しいものを追いかけて生きる」という価値観を聞き、非常に胸が躍る
- ルルは「風のみちしるべ」に自分の将来が縛られていると感じ、怪盗Uの盗みを手助けすることを選ぶ。その代わり、盗みが成功したら自分を島の外へ連れ出してほしいと頼み、交渉が成立する
怪我に絆創膏を貼ってあげて、自由な生きざまを語り、狭い世界で生きてきたルルにとって初めての「理解者」となった怪盗U。交渉は一見、相互に利益があるように見えますが、この後…。
怪盗Uの「搾取」
ルルは変装して「怪盗メレンゲ」と名乗り、自慢の飛行能力で怪盗Uの盗みを成功させました。一旦2人はアジトに戻りますが、おしりたんてい一行は「この嵐ならまだ島の中に怪盗Uがいるはず」と捜索を続けており、ルルも合流します。
すると「漁に出たぺぺおじいさんが戻ってこない」という事実を知ります。この酷い嵐の中、大灯台から輝く「風のみちしるべ」が無ければ、おじいさんが帰って来ることは不可能と思われます。ルルは「わたしのせいでおじいさんが…」という後悔の念を抱き、風のみちしるべを奪還するために、怪盗Uのアジトに向かいます。
そこで対面した怪盗Uにルルは「やっぱり盗んだりなんかしなければ良かった、返してほしい」的なことを話します(うろ覚えですみません)。怪盗Uはなんて返したと思いますか?
「君はそう言うと思ってたよ。」
でも、アデューと言って、風のみちしるべを抱えたままグライダーで飛び去ってしまうのです。
怪盗Uは、あの「相互に利益があるように見えた交渉」の時点で、ルルが後悔する未来まで予測していたんですね。つまり相互に利益があり対等だと思っていたのはルル側だけなのです。「外の世界に連れ出してほしい」というルル側の条件も反故にされました。
これもう小学生向けのグルーミングの教材やんか…と頭を抱えたのでした。虐待親から逃げるために結婚相手を探していたのに、独身と噓をついた既婚者にただ性暴力を受けただけの高校生の自分とも重ねられてしんどい。
※被害者サポートセンターおかやまのサイトで紹介されている、検事の方の解説によれば、児童福祉法違反・青少年健全育成条例違反・迷惑防止条例に当てはまるような元彼でした(出典:大阪高等検察庁 田中嘉寿子検事「性犯罪被害者の心理」)
まともな大人ならルルをどうしたか
まず、盗みという犯罪行為に加担させないことは間違いないですよね、いくらルルが望んだとしても。
そもそもルルは「風のみちしるべが邪魔だった」のではなく「島の外に出たかった」んですよ。でも幼い人間がそこまで自分の深層心理を自己分析したり、言語化することは大変難しいことです。
怪盗Uは、上記の青い下線部分をしっかり理解したうえでルルを利用しました。
おしりたんていなら、ルルを諭して本当の願いに気づかせ、風のみちしるべを敵視しなくても島の外に出られる方法を示してあげるでしょう(実際、映画はそんな感じの結末でした)。
「ルルは風のみちしるべに人生を縛られているんだ!外に連れ出してあげる約束は、タイミングが悪くて叶えられなかっただけで、最初から無視するつもりではなかった!一瞬でもルルの心の隙間を埋めてあげたのに加害者呼ばわりかよ!?ルルだって窃盗を望んでいたのに!」
↑現実の搾取者がめちゃくちゃ言うやつ。模倣が上手すぎて我ながら苦笑い
先ほど載せたリンクの講演シリーズには加害者心理も解説してあって、加害者は本当に心の底から、「被害者になんの被害も与えていない」と思っているんだそうです。だから、性犯罪加害者には認知の歪みを治療するプログラムを自費または公費で受けさせることを義務化してほしいですが、そもそも性犯罪の法定刑は財産罪(強盗とか)の法定刑の約半分という性犯罪軽視国家では難しいでしょうね…。(リンク先に法定刑を比較した分かりやすい表があります)
真っ先に、今いる子供たちを守るしかないですね。「いかのおすし」みたいに不審者を警戒する教育は昔からされてきましたが、それだけではなく、「時間をかけてあなたと仲良くなったふりをする悪人もいる」という悲しい事実も教育の必要があると思います。児童福祉法に守られなかった者からの一意見です。

しょうもない余談ですが、キャラクターとしての怪盗Uは個人的にはけっこう好きです(頭の形を除いて)。映画のグルーミング描写が子供向け教材になるくらい分かりやすかった、という話であって、別に作品や怪盗Uを憎んだり嫌ったりしてません、、!